最終更新日: 2026年8月1日

STORESやBASEで副業のネットショップをやっていると、ある日ふと不安になります。「うちの店、インボイス登録しなくて大丈夫なのかな」。

検索して出てくる記事の多くは、フリーランスや個人事業主が企業(取引先)と仕事をする前提で書かれています。「一般のお客さんに商品を売っているだけの個人ネットショップは、そもそも登録の話に関係あるのか」という一番知りたい部分に、はっきり答えてくれる記事が少ないんですよね。

この記事でわかることは3つです。

  • 「取引相手が誰か」だけで判断できる、登録要否のフローチャート
  • 登録した場合/しない場合の損得を、実際の数字で比較したもの
  • 2026年に迫っている2つの期限(2割特例の終了と経過措置の切り替わり)

結論から言うと、売り先のほとんどが一般消費者(BtoC)なら、インボイス登録は急いで検討しなくて大丈夫なケースが多いです。インボイス制度は、買い手が「仕入税額控除」という消費税の計算をするための制度で、これを使うのは課税事業者、つまり企業や個人事業主だけだからです。一般消費者は確定申告で仕入税額控除をしないので、インボイスの有無を気にする理由がありません。

私はSTORESでネットショップを運営している個人事業主です。STORESの確定申告のやり方も別記事にまとめていますが、インボイスについては「BtoBの話ばかりで、うちみたいなBtoC中心の店はどう判断すればいいのか書いてある記事が少ない」と感じたので、STORES・BASEそれぞれの公式ヘルプと国税庁の情報を確認しながら整理しました。制度の数字は国税庁のインボイス制度特設サイトで確認したものだけを載せています(2026年8月1日時点)。断定できない部分は「税務署に確認を」と案内しますが、これは逃げではなく、自治体・個人ごとに扱いが変わる部分を一次情報で潰すための実務的な案内です。

判断の一番の軸は「売り先が誰か」

結論:インボイスは「買い手が消費税の仕入税額控除をするための書類」。買い手が一般消費者なら、そもそも使い道がありません。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日から始まった制度です。仕組みをシンプルに言うと、こうなります。

  • 買い手(課税事業者)は、仕入や経費にかかった消費税を、自分が納める消費税から差し引ける(仕入税額控除)
  • この控除を受けるには、原則として売り手が発行する「適格請求書(インボイス)」の保存が必要
  • インボイスを発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」だけ

ここで重要なのは、仕入税額控除を行うのは消費税の申告をする課税事業者だけという点です。一般消費者は自分の買い物について消費税の申告をしません。つまり、あなたの商品を買った一般消費者にとって、あなたがインボイスを発行できるかどうかは、その人の税金の計算に一切関係がないのです。

これが、BtoC(一般消費者向け)中心のネットショップで「登録しなくても実務上困らないケースが多い」と言われる理由です。逆に言えば、買い手が企業や個人事業主(BtoB)で、その買い手が仕入税額控除を使いたい場合だけ、インボイスの有無が実際に問題になります。

フローチャートで確認|あなたは登録すべき?

結論:3つの質問に答えるだけで、今すぐ登録を検討すべきかどうかが分かります。多くのBtoCネットショップは①で判定が終わります。

質問答え判定
①お客さんの大半は一般消費者(自分用・プレゼント用に買う個人)ですか?はい登録を急ぐ必要は低い。②へ(念のため確認)
いいえ(企業・個人事業主への卸売や納品が中心)登録の検討を。③へ
②取引先から「インボイス(登録番号)をください」と言われたことがある、または今後言われそうですか?いいえ免税事業者のままで実務上は問題なし
はい(一部に法人や個人事業主の顧客がいる)売上に占める割合を確認。少数なら値引き交渉で対応する手もある。多いなら③へ
③今後、卸売・OEM・法人向け販売などBtoBを増やす計画はありますか?ない今は免税事業者のままでよい
ある登録を前向きに検討(2割特例が使える今のうちに、が実務上のポイント)
国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」の制度趣旨をもとに筆者が整理したフローチャート

迷ったときの目安は「今の売上のうち、インボイスを欲しがる相手がどれくらいいるか」です。ゼロに近いなら、急いで結論を出す必要はありません。

STORES・BASEの個人ショップは実際どうなっている?

結論:STORES・BASEともに、インボイス登録は必須ではなく、登録した事業者だけが管理画面で番号を設定する仕組みです。未登録でも出店・販売そのものは通常どおりできます。

まずBASEの公式ヘルプには、こう明記されています。

BASEではインボイス制度に対応されなくてもご利用いただけます。

BASE公式ヘルプ「インボイス制度対応について」

STORESネットショップのFAQでも、設定が必要になる条件がこう書かれています。

課税事業者の場合は、Web管理画面にて、ご自身の事業の登録番号の登録が必須です。

STORES ネットショップ よくある質問「インボイス対応はどのようにすればよいですか」

裏を返せば、免税事業者のまま・未登録のままなら、この設定欄自体が自分に関係ないということです。管理画面を触っていても、インボイス関連の設定を求められるのは「登録した事業者」だけで、フリープランで細々と売っている個人ショップの大半には、今のところ設定作業そのものが発生しません。

ここで誤解しやすいのが「プラットフォーム側の対応」と「自分が登録すべきか」は別の話だという点です。STORES・BASEが機能として対応していることと、あなた自身が適格請求書発行事業者になるべきかどうかは、まったく別の判断です。プラットフォームの機能はどちらに転んでも使えるように用意されているだけ、と考えてください。

登録した場合・しない場合の損得比較

結論:登録しない最大のメリットは「消費税の申告義務がないこと」。登録する最大のメリットは「BtoB取引で選ばれやすくなること」です。

メリットデメリット
登録しない
(免税事業者のまま)
・消費税の申告・納税が不要
・帳簿づけの負担が増えない
・売上がそのまま手取りに近い
・BtoBの取引先から値引きや取引縮小を打診される可能性がある
・新規の法人取引を開拓しにくくなる場合がある
登録する
(課税事業者になる)
・BtoB取引で敬遠されにくい
・2割特例が使える今のうちなら消費税の負担が小さい(後述)
・消費税の申告・納税が必要になる
・帳簿づけと申告の事務負担が増える
・売上規模によっては本則課税や簡易課税の判断も必要
国税庁「インボイス制度」の制度概要をもとに筆者が整理

ここで大事なのは「デメリットが自分にとって現実に起きるかどうか」です。一般消費者しか買わない店なら、登録しないデメリットの欄はほぼ発生しません。逆にBtoBの比率が高い店なら、デメリットが売上に直結します。自分の売り先の比率を無視して一般論だけで判断すると、どちらの方向にも損をします。

2026年に知っておきたい期限|2割特例と経過措置

結論:個人事業者が使える2割特例は令和8年分(2026年分)の申告が最後。2026年10月1日には、買い手側の経過措置も80%控除から50%控除に下がります。

「登録するかどうか、まだゆっくり考えよう」と思っている人に伝えておきたいのが、この記事を書いている2026年8月時点で、すでに2つの制度が節目を迎えているということです。

①2割特例は令和8年分が最後

2割特例は、インボイス登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった小規模な事業者の消費税負担を軽くする経過措置です。国税庁の特設ページによると、適用できるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する課税期間まで。個人事業者の場合、暦年で申告するので、対象になるのは令和5年分(10〜12月のみ)・令和6年分・令和7年分・令和8年分の最大4回です。

つまり令和8年分(2026年分)の確定申告が、2割特例を使える最後のチャンスということになります。「そのうち登録しよう」と先延ばしにしていると、この優遇を使わないまま課税事業者になる可能性があります。

②2割特例が終わった後は「3割特例」

令和8年度税制改正で、2割特例の終了後に個人事業者だけを対象にした新しい経過措置「3割特例」が創設されました。国税庁の資料によると、これはインボイス登録によって免税事業者から課税事業者になった個人事業者(基準期間の課税売上高1,000万円以下)を対象に、令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)の消費税申告について、納付税額を売上に係る消費税額の3割にできるという措置です。法人は対象外で、あくまで個人事業者向けの激変緩和措置です。

負担の重さで言うと、2割特例(納税額=売上消費税額の20%)より3割特例(同30%)のほうが負担は重くなります。「登録するなら2割特例が使える令和8年分のうちに」という判断は、税負担だけを見ても理にかなっています。

③買い手側の経過措置も2026年10月に切り替わる

もう1つ、あなたが登録するかどうかとは別に知っておくべきことがあります。あなたの取引先(買い手)が免税事業者から仕入れた場合の経過措置も、2026年10月1日に変わります。2023年10月から2026年9月までは免税事業者からの仕入でも80%の仕入税額控除が認められていますが、2026年10月1日からは50%に下がります。

これは「あなたが登録すべきか」を直接決めるものではありませんが、もしBtoBの取引先がいるなら、2026年10月を境に、その取引先が受けられる控除が目減りするということです。取引先から「そろそろインボイス登録してもらえないか」という打診が増えるとしたら、この時期を境にしている可能性があります。BtoBの比率が高い人は、この経過措置のスケジュールも判断材料に入れておいてください。

登録するなら2割特例?簡易課税?独自試算で比較

結論:仕入原価率が高い物販ネットショップは、2割特例と簡易課税(小売業)の納税額がほぼ同じになり、どちらも本則課税より有利になりやすいです。

「登録した場合、消費税はいくら納めることになるのか」がイメージできないと判断のしようがないと思うので、仮の数字でシミュレーションしてみます。年間売上300万円(税込)、仕入原価率50%と仮定した、架空のシミュレーションです。

方式計算の考え方納税額(目安)
本則課税売上に係る消費税 272,727円 − 仕入に係る消費税 136,364円約136,000円
簡易課税(小売業・第2種、みなし仕入率80%)272,727円 ×(1 − 80%)約54,500円
2割特例272,727円 × 20%約54,500円
年間売上300万円(税込)・仕入原価率50%と仮定した架空のシミュレーション。消費税率10%、簡易課税の事業区分は「他者から仕入れた商品をその性質・形状を変更せずに消費者へ販売する」小売業(第2種事業)を想定。実際の税額は仕入の内訳や事業区分の判定によって変わります

おもしろいのは、物販中心のBtoCネットショップ(小売業・第2種事業に区分される場合)だと、簡易課税と2割特例の納税額がほぼ一致することです。これは2割特例の「売上消費税額の20%」という計算が、みなし仕入率80%の簡易課税とほぼ同じ効果になるためです。一方で、原価率が低い(利益率が高い)事業ほど、簡易課税・2割特例と本則課税の差は開きます。

ここから言えるのは、「今から登録するなら、簡易課税を選ぶにしても2割特例を使うにしても、令和8年分のうちは負担がかなり抑えられる」ということ。逆に3割特例に切り替わる令和9年分からは、同じ条件でも納税額は約8.2万円(272,727円×30%)に増えます。判断を先延ばしにするほど、優遇の恩恵は薄くなっていきます。

なお簡易課税を選ぶには、原則として適用を受けようとする課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。事業区分(何種に当たるか)も業種によって変わるので、複数の事業を営んでいる人や、判断に迷う人は税務署に確認してください。

登録して課税事業者になった後の確定申告・帳簿づけの実務は、STORESの売上データの見方や会計ソフトの比較を含めて別記事にまとめています。

STORES確定申告のやり方|いくらから必要?申告方法4つ比較を見る
STORES管理画面の「売上」「入金」のどちらを申告に使うか、会計ソフト3社の比較、青色申告65万円控除の要件までまとめています。消費税の課税事業者になった場合にどのソフトが向いているかも書いています。

私ならこう判断する

結論:BtoC専業なら今は登録しない。BtoBが1割でもあるなら、2割特例が使えるうちに登録を検討します。

  • お客さんがほぼ一般消費者(プレゼント用・自分用の購入が中心) → 今は登録しません。仕入税額控除を使わない相手に対して、あえて事務負担を増やすメリットが薄いからです
  • 一部に法人・個人事業主の顧客がいて、インボイスを求められたことがある → その顧客の売上比率と、値引き交渉で吸収できる金額を比べます。比率が小さければ、当面は個別に相談して乗り切る選択肢もあります
  • BtoBの卸売・OEM・法人向け販売を増やす計画がある → 2割特例が使える令和8年分のうちに登録を検討します。3割特例に切り替わってからでは負担が重くなるので、計画があるなら先送りしないほうが得です
  • 迷っていて、自分の売上構成を正確に把握していない → まず直近半年の注文履歴を見て、法人名・屋号での注文がどれくらいあるかを数えるところから始めます

全員に同じ答えを出す記事は読者を迷わせるだけなので、あえて条件を切りました。自分がどの条件に近いかで、やることは変わります。

よくある質問

Q1. 副業のネットショップも消費税は関係ありますか?

関係します。ただし個人事業者は、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら原則として消費税の納税義務が免除される「免税事業者」になります。インボイス登録をしていない限り、多くの副業ネットショップは免税事業者のままです。登録すると、売上規模にかかわらず課税事業者になります。

Q2. STORESやBASEで「登録番号」を入力しないと商品が売れなくなりますか?

そのようなことはありません。BASEは公式ヘルプで「インボイス制度に対応されなくてもご利用いただけます」と明記しています。STORESも、登録番号の入力が必須になるのは「課税事業者の場合」であり、免税事業者・未登録のままなら通常どおり出店・販売できます。

Q3. 普段は一般消費者向けですが、たまに法人からの注文が来ます。登録すべきですか?

その法人からの注文がインボイスを必要としているか、まず確認してみるのが早いです。その法人が簡易課税を選んでいたり、そもそも仕入税額控除を重視していない場合もあります。比率が小さいうちは、個別に「インボイスは発行できませんが」と伝えて相談する、値引きで調整するなどの対応も現実的です。比率が大きくなってきたら、登録を検討するタイミングです。

Q4. 2割特例はいつまで使えますか?

国税庁の特設ページによると、適用できるのは令和5年10月1日から令和8年9月30日の属する課税期間までです。個人事業者の場合、令和8年分(2026年分)の申告が最後になります。令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)は、要件を満たす個人事業者に限り「3割特例」が新たに適用されます。

Q5. 登録するかどうか、結局誰に相談すればいいですか?

一般的な判断軸はこの記事の内容で立てられますが、事業区分の判定や、自分のケースで簡易課税と2割特例のどちらが有利かといった個別の計算は、所轄の税務署か税理士に確認するのが確実です。国税庁のインボイスコールセンターや、税務署の相談窓口は無料で利用できます。判断を迷ったまま登録・未登録のどちらかに突っ走るより、一度数字を見てもらうほうが早いです。

まとめ

この記事の要点を4行にまとめます。

  • インボイスは「買い手が仕入税額控除をするための書類」。買い手が一般消費者なら使い道がなく、登録を急ぐ必要は低い
  • STORES・BASEとも未登録・免税事業者のままで通常どおり販売できる。設定が必須になるのは登録した課税事業者だけ
  • 個人事業者の2割特例は令和8年分(2026年分)が最後。その後は令和9・10年分に限り3割特例に切り替わる
  • BtoBの比率が上がる予定があるなら、2割特例が使えるうちに登録を検討したほうが税負担は軽い

まずは直近の注文履歴を見て、法人名・屋号での注文がどれくらいあるかを数えてみてください。その比率が、あなたにとっての答えに一番近いものです。登録すると決めたら、確定申告や帳簿づけの実務は次の記事で具体的に確認してください。

STORES確定申告のやり方|いくらから必要?申告方法4つ比較
課税事業者になった場合の消費税申告に対応した会計ソフトの選び方まで、申告の全体像をまとめています。

なお、この記事は制度の公表情報を整理したものです。あなたが登録すべきかどうか、簡易課税と2割特例のどちらが有利かといった個別の判断は、所轄の税務署または税理士に確認してください。税務署の相談窓口やインボイスコールセンターは無料で利用できます。

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※制度の内容は国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」特設ページ、2割特例・3割特例の案内ページ、経過措置に関する案内、BASE公式ヘルプ、STORES公式FAQをもとに、2026年8月1日時点で確認したものです。制度や経過措置の扱いは今後変更される可能性があるため、登録の判断前に必ず最新情報をご確認ください。個別の判断は所轄の税務署または税理士に確認してください。

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